取材記事

ふるさとの景色を愛する、真心込めたお菓子屋さん

大阪から西谷へ帰ってきた久保さんの”EKüBO”物語

青い壁と白いドアが印象的な、自然の中のお菓子工房

畑の向こうに見える青い壁。
季節の花々が咲く小径を歩くと、そこには「EKüBO」の手書きの看板が迎えてくれます。
兵庫県宝塚市北部・西谷の切畑に今年6月8日にオープンしたお菓子工房は、まるでジブリの世界に迷い込んだような、心温まる場所でした。

店主の久保さんは、この西谷生まれ西谷育ちの30代女性。
調理専門学校卒業後、兵庫県のお菓子屋さんで4年半、その後辻製菓専門学校で5年間職員として勤務し、大阪のケーキ屋さんで3年間店長を務めた後、ふるさと西谷に帰ってきました。


なぜ久保さんは西谷を選んだのか

「ケーキだけを買いに来るのではなく、ケーキを買いに来る過程で『あぁ、緑いっぱいやなぁ』『山がきれいやなぁ』『鳥の声が聞こえる』そんな体験を一緒に味わっていただきたかったんです」

駐車場からお店までの短い散歩道。季節の移ろいを感じながら歩く数分間も、EKüBOの魅力の一部なのです。久保さんが理想とした「自然に包まれてケーキを買う体験」は、西谷だからこそ実現できるものでした。


木の温もりに包まれた、安心できる空間

店内は、久保さんがこだわった木の質感を活かした内装。
「入ったらちょっと安心できるような、暖かい空間を作りたかった」という思いから、建築の方にお願いして、柱や天井に木の部分を残してもらいました。

青い壁の焼き菓子コーナーには、手作りの温かみが感じられるクッキーやフィナンシェが並び、ショーケースには色とりどりのケーキやプリンが美しく陳列されています。


妥協しない材料へのこだわり

「自分が本当においしいと思うものだけを使って作ったものを、お客様には食べていただきたい」

これが久保さんの信念です。
生クリームは共進牧場の2種類をブレンド、塩はゲランドの塩、ミルキー感の強いバターを使用。
物価高騰の影響で経営が厳しくなる中でも、材料へのこだわりは大切に。

「美味しいものを使ったら美味しさが増すので、西谷の季節の果物や食材も積極的に取り入れています」


少量だからこそ叶う、丁寧なお菓子作り

現在、EKüBOは土日のみの営業。
久保さんが一人で製造から販売まで全てを担っています。
家庭用オーブンで時間をかけて回転させながら焼くため、大量生産はできませんが、だからこそ一つひとつに心を込めることができるのです。

「作れる量が少ないということもあって、12時までにはほとんどなくなって、あとはシュークリームとプリンだけ残っているみたいなことが多いです」と久保さん。
少量生産だからこそ、その日のお客様に最高の状態でお菓子をお届けできる――これこそがEKüBOのスタイルです。


お菓子作り体験で広がる地域の輪

久保さんは販売だけでなく、お菓子作りの体験も提供しています。
西谷の婦人会でアイシングクッキーやいちごタルト、シャルロットケーキなどの講師を務めた経験もあり、11月の西谷小学校でのマルシェにも出店予定です。

「子どもたちにお菓子作りの楽しさを伝えたいですし、地域のイベントとのコラボレーションも大歓迎です」と久保さん。
お祭りや学校行事、企業のイベントなど、様々な場面でお菓子作り体験を通じた特別な時間を提供できる可能性を秘めています。


人気商品とオーダーメイドの魅力

**人気のシュークリーム(350円)**は、ザクザクの甘いシュー生地に甘さ控えめのクリームがたっぷり。「癖になる美味しさ」と評判です。

**とろりぷリン(320円)**は生クリームと2層になった懐かしい味わい。どの世代からも愛される逸品です。

さらに、特注のデコレーションケーキやアイシングクッキーのオーダーも受付中。
お客様のペットの写真をアイシングクッキーで再現するなど、一つひとつ丁寧に手作りしています。


訪れる人すべてに「笑顔」を

「EKüBO」の名前には、久保さんの「えくぼ」がチャームポイントであることと、訪れる人すべてに笑顔になってほしいという願いが込められています。
Instagramアカウント名「ekubo_magokorookashi」が示すように、愛情を込めて一つひとつ丁寧に作られたお菓子たちが並んでいます。

お客様も様々です。
平野区で店長をしていた時代の常連客の中には、今でもわざわざ西谷まで久保さんのケーキを買いに来てくれる方もいます。
「私のケーキを買いたい」と言って、遠い道のりを来てくれるお客様の存在は、久保さんにとって何よりの励みです。

また、「この前の道がみんなの通勤通路みたいで、看板を見て『なにこれ?』ってなって気になって調べてくれて、休みの日に来てくれる」という偶然の出会いから始まる物語も。
看板に気づいた方が、週末にご家族で訪れてくれることも多いそうです。

動物好きの久保さんは、ワンちゃん用のケーキも手作りしています。
オープン前には宝塚テラスでワンちゃんのお菓子作りのアルバイトもしていました。
現在もワンちゃん用シフォンケーキやデコレーションケーキを宝塚テラスで販売中。
ペットの誕生日や記念日に、安心安全な手作りケーキはいかがでしょうか。


アクセスと営業について

住所: 兵庫県宝塚市切畑久保カイチ22
営業日: 土・日曜日(詳細はInstagramで確認)
営業時間: 10:00〜売り切れ次第終了
Instagram: @ekubo_magokorookashi
駐車場: あり

宝塚駅から車で約20分、長尾山トンネルから約10分。
切畑交差点を右折し、県道324号線を200mほど進むとEKüBOの旗が見えます。


最後に

久保さんは現在、アルバイトも続けながら、夢のお菓子屋さんを運営しています。
「楽しいんだけど、本当に大変」と正直な気持ちを話してくれる久保さんの姿からは、お菓子作りへの純粋な愛情と、西谷という土地への深い愛着が伝わってきます。

緑豊かな西谷の風景を眺めながら、鳥のさえずりを聞きながら、心を込めて作られたお菓子を味わう――そんな特別な時間を過ごしに、ぜひEKüBOを訪れてみてください。

きっと久保さんの温かい笑顔と、真心込めたお菓子たちが、あなたの心にもそっと「えくぼ」を作ってくれることでしょう。

https://www.instagram.com/ekubo_magokorookashi

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