取材記事

命と向き合う、西谷の酪農家 〜梅脇牧場が紡ぐ、未来への物語〜





西谷の上佐曽利地区に、昭和45年から続く梅脇牧場があります。
約600キロの牛たちが静かに草をはむ牧場では、毎日が命との対話です。





一頭の牛から始まった、家族の挑戦

「小学校一年生の時、親父が自宅で飼っていた牛から事業をスタートしたんです」

二代目の梅脇しげよしさんが語るのは、今から約56年前の出来事。 昭和45年(1970年)、お父さんが始めた酪農事業。
西谷のような田舎では、農家をしながら自宅で牛なども飼っていることも多かった。
その一頭の牛から本格的な酪農家へと舵を切ったのです。
少しずつ牧場を大きくしていったお父さん。
その起業家精神は、今も梅脇牧場の礎となっています。

そして平成18年、現在の大規模な施設を建設。
しげよしさんは父の背中を見ながら、この牧場を受け継ぎ、さらに進化させてきました。
そして今、娘さんが三代目として、この伝統を受け継いでいます。





見えない努力が、命を支える

取材に訪れた日の朝、梅脇牧場ではなんと新しい命が誕生していました。
しげよしさんは生まれたばかりの子牛の対応で大忙し。

生まれたての子牛には、まず初乳を飲ませます。
初乳には、病気から身を守るための免疫力をつける大切な成分が含まれているのです。
そして、体を優しく拭いて、毛布をかけてあげる。

小さな命を守るために、一つひとつの作業を丁寧に。
牧場では、こうした命の誕生と向き合う日々が続いています。



「この子たちは最近出産を終えた子たちなんです」

しげよしさんが手にしているのは、大きな注射器。
中には、カルシウムなどの栄養剤が入っています。

「牛乳出すとカルシウムをいっぱい失うんですよ。すぐにカルシウムを注入してあげないと、立つ力がなくなってしまうんです」

牛たちは出産を通して多くのカルシウムを体から失ってしまう。
だから、注射で直接血液に栄養を届ける必要があるのです。

600キロもの大きな体でも、注射の痛みは変わらない。
それでも、命を守るために必要なケア。
しげよしさんの瞳、手からは、生き物と向き合う覚悟と愛情がひしひしと伝わってきました。





世界基準で選ばれる、エリート牛たち

梅脇牧場には、もう一つの顔があります。
それは、最先端のゲノム検査を活用した取り組みです。

東京農業大学で酪農を学んできたしげよしさん。
田舎な西谷ですが、梅脇牧場では学んできた知識を活かした先端的な酪農が行われているのです。

「昔は、一頭一頭の成績データを記録して、優秀な子を探していたんです」

しかし、約5年前から導入したのが、アメリカでのゲノム検査。
牛の耳の細胞を採取し、アメリカの検査機関に送って遺伝子情報を詳細に分析することで、その牛の能力を科学的に評価するのです。

ミルクの生産量、性格の穏やかさ、病気への強さ。
世界中のデータと比較して、優秀な遺伝子を持つ牛だけを残していく。

「世界のデータと比較することで、本当に優秀な牛を見極められるんです。西谷にいる牛たちも世界基準で優秀な子たちなんです」

この取り組みによって、梅脇牧場の牛たちは着実に進化を続けています。





「知ってもらうこと」の大切さ

しげよしさんが、もう一つ大切にしているのが、子どもたちとの交流です。
学校単位での受け入れなども行っています。

「30人ぐらいで来てもらって、ぐるっと回って、ミルクあげたり、乳搾りしたり」

しかし、600キロもある牛との触れ合いには、細心の注意が必要です。

「やっぱり危ないからね。けられたりとか、牛がストレス感じてしまうこともある」

だから、哺乳瓶でミルクをあげる体験や、搾乳の仕組みを見学してもらうことで、安全に学べる工夫をしています。

親指と人差し指でつまんで、ぎゅーっとして乳を搾ること。
そんな基本的なことから、子どもたちに丁寧に伝えています。

給食などでも飲む機会の多い牛乳が、どんなふうに作られているのか。
牛たちがどんな思いで育てられているのか。
子どもたちに、命の温もりと食の大切さを知ってもらいたい。
それが、しげよしさんの願いです。





西谷で育まれる、命の循環

牛にも、一頭一頭に名前があります。
最近は、娘さんがポケモンの名前を付けているのだとか。

梅脇牧場では、3日に1回程度のペースでお産があります。
つまり、年間で約100頭もの新しい命が誕生しているのです。

「毎年100個ぐらい名前付けないとダメですからね」

そう笑いながら話すしげよしさんの顔には、どこか誇らしげな表情が浮かんでいます。

昭和45年、一頭の牛から始まった夢。
それは今、最先端の技術と温かな人の手によって、次の世代へと受け継がれています。

毎日、牛たちと向き合い、命を支え、未来を育てる。
梅脇牧場の仕事は、単なる酪農ではなく、西谷という地域の物語そのものなのです。






あなたも、牛たちとの特別な時間を体験してみませんか?

2026年5月30日(土)、西谷で開催される「里山 time trip」では、梅脇牧場での乳搾り体験ができます!
牛たちとのふれあいを通して、命の温もりと食の大切さを学べる貴重な機会です。
小学生のお子さんがいるご家族は、ぜひご参加ください。

里山 time trip ~しぼって飲んで にしたにミルクツアー~


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