取材記事

「学校おうえん団は、楽しい!」

~移住5年目 地域ボランティアコーディネーターが語る 小さな学校の大きな魅力~

はじめに

宝塚市の山間部に位置する西谷地区。豊かな自然に囲まれたこの地域で、移住5年目を迎えたニイバさんは、現在、西谷小学校の地域ボランティアコーディネーターとして活動している。都市部から西谷に移り住んだ一人の母親が見つけた、この地域ならではの教育環境と地域コミュニティの魅力について話を聞いた。

移住のきっかけ~歯医者から始まった西谷との縁~

~移住前の不安から、思いがけない出会いへ~

ニイバさんが西谷を知ったのは、意外にも歯医者がきっかけだった。知人から紹介してもらった西谷の歯科医院で懇意に治療してもらえた経験から、小さな子ども2人を連れて通うようになった。

「雪の降る日に、駅からのバスに乗り遅れて、子どもと武田尾温泉の足湯で、次のバスを待ったことも。歯科はとてもいい先生と、親切なスタッフ。治療が終わったら、帰りのバスまで、子どもたちは児童館で遊び、私は職員さんと子育てのおしゃべり。段々と西谷が身近になっていったんです」

~物件探しから始まった地域の人とのつながり~

移住を決意してからは、同じ職場の西谷在住の方が本当によくサポートしてくださった。物件探しから自治会への加入、ご近所の方々との関係作りまで、様々な場面で今も助けてもらっている。

「野菜が採れたからとお裾分けをいただいたり、急に猪の肉をもらったり。スーパーで好きなものを買うのとは違う楽しさ、お金ではない豊かさがあります」

移住して見つけた西谷の魅力

~「作る」ことへの憧れが現実に~

移住の大きな理由の一つは、これまでの「消費者」としての立場から、何かを「作る」行為に関わりたいという思いだった。

「実際に野菜を作ってみると、毎日のように虫と雑草との戦い。カメムシを手で潰したり、暑い中でピーマンの花を虫に食べられてしまったり。有機栽培や農薬を使わずに作ることの大変さを身をもって感じました。でも、自分たちで作った野菜の美味しさは格別。子どもたちも野菜の味がよくわかっている。夏バテもしないんです」

~生産者が身近になる世界~

西谷で暮らすようになって、農業や食に対する見方が大きく変わったという。

「米不足がニュースになっても、西谷では専業農家の方も兼業農家の方もいて、代々田んぼを守って営んできた現実が身近に見えるんです。雨がいつ、どのくらい降るのかも気になる。テレビで見る表面的な情報とは全然違った見え方になりました」

子どもたちが変わった~西谷小学校での成長~

~西谷の子どもたちとの出会い~

転校した当初、子どもは緊張していたが、人懐っこい西谷っ子たちが、すぐに輪に入れてくれた。先生たちもあたたかく、その様子を見守ってくださった。

クラスメイトから「もっと変になっていいんだよ」「真面目すぎるんだよ」と言われ、ニイバさんは驚いた。

「普通、転校生には『郷に入れば郷に従え』みたいなことを言うものじゃないですか。でも西谷の子どもたちは『変になれ』と言ってくれた。同調圧力が全くないんだと感じて、子どもたちにとって居心地の良い環境だと思いました」

~学校での日常が楽しい話題に~

今では毎日の夕食時に、学校での出来事を楽しそうに話すようになった。

「お友達が机にロープを結びつけて机を振り回して遊んでるとか、そんな遊びがあるの?みたいな話を面白そうに話してくれるんです」

インクルーシブな教育環境

~分け隔てのない子ども同士の関係~

西谷小学校でニイバさんが特に素晴らしいと感じるのは、特別支援学級の子どもたちへの接し方だ。

「私はいつも『○○学級』の子どもと分けて考える傾向を残念に思っているんですが、西谷では一緒にいることが当たり前。子ども同士がフラットに、人と人として出会えているんです」

~助け合いの文化が根付いている~

体調を崩しやすい子がいると、周りの子どもたちがすぐに保健室に運んだり先生を呼んだりする。

「調子悪そうじゃない?無理してない?と、いつもと様子が違ったら、自然に気にかけ合う。先生やおとなが配慮するものだとかではなくて、そばにいるものが思う。とても素敵な子ども同士の関係だと思いました」

西谷小・中学校の特色ある教育

~本格的な米作り体験授業~

特に印象的なのは、里山ラボが企画した「100人お米作りプロジェクト ~休耕田から広がる挑戦~」に、西谷中学校の子どもたちが参加していることだ。

「田んぼがどれぐらい育ったかな?と写真を撮り続けているんです。今日はお米の花が咲いてとても綺麗でした。花が咲く時に一番水が必要だということも、地域のおじいちゃんから教えてもらいました」

~まち探検で見える地域の温かさ~

小学1~2年生のまち探検では、大原野神社から始まって消防署、郵便局、警察署、児童館、養鶏場、みんなの居場所になっているカフェまで回る。

「子どもたちは物怖じしないで、出会う人みんなに話しかけるんです。警察署では『ピストルを見せて』とお願いして、代わりに警棒を見せてもらったり。養鶏場では、普通は鳥インフルエンザの予防で中に入れないんですが、特別に外側から見せてもらえました。鳥たちの方が人間を珍しがって集まってきて、まるで人間が見られているようで、子どもたちもドキドキ」

地域ボランティアコーディネーターとしての活動

~学校と地域をつなぐ役割~

ニイバさんは、地域ボランティアコーディネーターとして、学校が「こういうことをしてもらえたら助かる」というニーズと、地域が「子どもたちとこういうことをしませんか?」という提案をうまく噛み合わせる役割を担っている。

~地域の「スーパーおじいちゃん・おばあちゃん」たち~

西谷には多くの地域ボランティアの方々がいる。

先ほどの「まち探検」も、ボランティアのおじいちゃんとおばあちゃんが引率しながら、草遊びや歌を教えてくれた。

特色ある教育は、彼らに深く支えられている。

「孫が通っているわけじゃなくても、花壇の整備や学校の環境作りに協力してくださっている方がいっぱい。毎朝子どもたちに手を振って挨拶してくださる方もいて、子どもが図工の時間にその方の絵を描いたほどです。どの子の育ちも、自分の孫のように喜び、応援してくださいます」

はじまる!特認校

~ピンチが、チャンスに~

急激な少子高齢化によって、学校はどうなるのか。

3年前のこと。ママさんや子どもに関わる仕事をしている住民有志で集まり、まち協「未来の学校を考える部会」が立ち上がる。

小さくともキラリと光る学校を目指し、西谷の様々な人と力がつながって…

やがて教育委員会が正式に立ち上げた「西谷地区学校づくり検討委員会」に発展した。

「最初は固い雰囲気でしたが、今ではまず何でも言ってみよう!と、どんな立場でも、みんなでアイデアを出し合う機動的な会議になっています」

コミュニティ・スクール(学校運営協議会)とともに、保護者・地域住民が、学校の先生や教育委員会の職員さんと一緒に、話し合って、協力して、学校を作っていく場になっている

~声を上げることの大切さ~

この取り組みを通じて、ニイバさんは地域の保護者たちの力を実感した。

「自分の子ども、他の子どもも、あったかいまなざしで見てるママさんが多いです。そんなおとなが多い学校や地域は、子どもが安心するのだろうな」

検討委員会でまとめた西谷としての意見書を、代表のメンバーで、教育長に手渡しに行った時のこと

「あるママさんが『誰かがやってくれるとかじゃなくて、私たちも主体的に、学校や地域を作っていきたい』と教育長にお話ししているのを聞いて、感動しました。声を上げることで、学校も地域も良い方向に変わっていける。」

今後の展望

~次の おもしろい学びを~

ニイバさんには一つの大きな夢ができた。森市長を西谷に招いて、子どもたちとの対話授業が実現できたらという思いだ。

きっかけは、市民と市長の対話のひろばに参加したことだった。

「市長さんは国連の人口政策を担う部門で働いたり、イギリスやオーストラリアの病院、医療・保健分野の政策立案に携わったりと、国際的にいろんな人々と仕事をしてきた経験の持ち主でした。そういうリアルな世界を知る方から直接話を聞けたら、西谷の子どもたちにとって、広い世界を知る、またとない貴重な機会になると思うんです」

~「お任せ」ではなく「一緒に作る」学校づくり~

インタビューの最後に、ニイバさんはこう語った。

「学校がだんだんサービス業のようになって、『先生がやるところでしょ?』という感じで、学校は学校、家は家、地域は地域と分断していくと、面白くなくなってしまいます。同じ9年間毎日過ごすなら、みんなにとって良い学校になるように、親も一緒に学校をおうえんする方が、『お任せ』よりもずっと楽しいと思うんです」

西谷小学校・中学校は特認校制度により、来年度からはすべての学年で、校区外からの転入学を受け入れる。

「ぜひ多くの方に来てほしい。一緒に学校づくりをしましょう」


宝塚市立西谷小・中学校PTCA ⇒ 公式インスタグラム

西谷小学校・中学校 特認校案内

〇 宝塚小学校 学校の様子

〇 宝塚中学校 学校の様子

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。