翌朝、ひかるは推理ノートを片手に西谷の里山を歩いていた。山田さんから教えてもらった現場は、のどかな田園風景の一角にあった。
「確かに、掘り返した跡がきれいに消されてる…」
証拠隠滅の手口が丁寧すぎる。これは計画的な犯行だ。
最初に向かったのは、近所の農家・田辺さんの家。チューリップの球根なら、園芸に詳しい人が関わっているはずだ。
「あの、昨日の夜に何か変わったことはありませんでしたか」
すると田辺さんは急に汗をかき始めた。
「い、いや、何も見てないよ!絶対に何も!」
必要以上の否定。これは推理小説の定番パターンだ。ひかるの探偵魂が燃え上がる。
次に訪れた古民家カフェ「里山テラス」でも、店主の佐藤さんの反応が妙だった。
「チューリップの球根?あー、うん、知らないなあ」
視線が泳いでいる。しかも、なぜかレジの下に園芸用のシャベルが隠してある。
「みんな何かを隠してる…」
ひかるは推理ノートに「全員共犯説」と書き込んだ。これは西谷地区全体を巻き込んだ大きな陰謀かもしれない。
夕方、怪しい人物の行動を見張ろうと田んぼの陰に潜んでいたひかるだったが、慣れない田舎道で完全に方向感覚を失っていた。
「あれ、さっきの分かれ道、右に曲がったっけ…左だっけ…」
暗闇の中をさまよい歩いているうちに、足元がぐらりと傾いた。
「きゃー!」
どぼん。
冷たい用水路に見事に落下したひかる。推理ノートもずぶ濡れだ。
「た、助けて…」
情けない声が、静かな西谷の夜に響いた。
