チューリップ探偵団 〜西谷に舞い散る謎と笑顔〜 #5-3

用水路から這い上がったひかるを助けてくれたのは、地元の青年・健太だった。年上の自分を「ひかるさん」と呼んでくれる彼の優しさが、冷え切った心を少し温めてくれる。

「せっかくだから、西谷のダリア畑を見ていきませんか。今が見頃なんですよ」

健太の案内で向かったのは、夕闇に浮かぶ美しいダリア畑だった。赤、白、ピンク、黄色、紫。まるで虹が地面に降りてきたような光景に、ひかるは思わず息を呑む。

「すごい…こんなに綺麗だなんて」

「毎年、住民みんなで育ててるんです。西谷の自慢なんですよ」

その時だった。畑の向こうから、ひそひそと話し声が聞こえてくる。

田辺さん、佐藤さん、そして山田さん。昨日から怪しいと睨んでいた人たちが、暗闇の中で円陣を組んでいる。

「明日の準備は大丈夫?」

「ひかるさんには内緒だよ」

「バレたらまずいからね」

ひかるの心臓が高鳴った。ついに決定的な証拠を掴んだ! これこそ共犯者たちの密談に違いない。

「待ってください!」

茂みから飛び出したひかるに、住民たちが振り返る。その顔は、なぜか困惑と苦笑いが入り混じっていた。

「あの、ひかるさん…」山田さんが申し訳なさそうに言った。「実は明日、あなたの歓迎会を開く予定だったんです」

「え?」

「ダリア泥棒の話、すっかり信じ込んでるから、どうしようかと相談してたんですよ」

静寂。

ひかるの頬が、ダリアよりも赤く染まった。