翌日、光男が川辺で水質を測定していると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「光男くん、おつかれさま」
振り返ると、近所のおばあちゃんたちがぞろぞろと現れた。手には洗剤のボトルやら、米びつやら、色んなものを持っている。
「おばあちゃんたちも蛍の研究に?」
「研究なんて大層なもんやないわ。昨日の話聞いてたら、要するに川をきれいにしたらええんやろ?」
おばあちゃんの一言に、光男は目を丸くした。
「え、あ、はい。その通りです」
「なら話は早い。みんな、合成洗剤やめて石鹸に替える。米のとぎ汁も川に流さん」
「おお、それは環境改善に効果的な」
「小難しい話はええから、実行あるのみや」
おばあちゃんたちの行動力は光男の想像を遥かに超えていた。翌週には西谷の各家庭で「川きれい作戦」が始まっていた。
光男が川辺を歩いていると、また新しい光景が目に飛び込んできた。おばあちゃんたちが川沿いの草刈りまで始めている。
「これも蛍のためやで」
汗をかきながら笑うおばあちゃんの顔が、夕日に照らされて輝いて見えた。
一週間後、川の水は確実に透明度を増していた。光男は測定器を握りしめながら、小さくガッツポーズをした。
「おばあちゃん軍団、恐るべし」
西谷の夕暮れに、希望という名の光が静かに宿り始めていた。
