西谷物語 〜雪降る里の贈り物〜西谷冬物語〜〜 #2-2

軽トラックの後を追いながら、美咲は西谷の冬景色に見とれていた。道の両側に広がる田んぼは雪に覆われ、まるで白いじゅうたんのよう。遠くには六甲の山並みがくっきりと見えている。

「こちらです」

軽トラックが古い民家の前で止まった。案内してくれた男性が車から降りてくる。

「農事組合法人はもう少し先なんですが、この雪だと道が危険です。まず我が家で温まっていかれませんか」

美咲は時計を見た。もう4時を過ぎている。

「でも、お忙しいでしょうし…」

「いえいえ、遠慮はいりません。山田と申します。雪道の運転は慣れていないと危ないですからね」

山田さんの人柄の良さが滲み出る笑顔に、美咲は素直に甘えることにした。

「田中と申します。ありがとうございます」

山田さんの家は築年数を感じさせる木造の農家住宅だった。玄関を開けると、薪ストーブの温かさが頬を包む。

「おばあちゃん、お客さんだよ」

奥から小柄なおばあさんが現れた。

「まあ、雪の中大変でしたね。さあさあ、上がって」

「恐れ入ります」

居間に通されると、薪ストーブの炎がゆらゆらと踊っていた。窓の外では雪がしんしんと降り続いている。

「ぜんざいでも作りましょうか」

おばあさんがにこやかに言う。

「いえ、そんなお気遣いは…」

「西谷の黒枝豆で作った甘納豆は美味しいんですよ」

山田さんが自慢げに話す。

「この辺りは黒枝豆で有名なんです。丹波の土と気候が合うんでしょうね」

美咲は薪ストーブの前で手を温めながら、二人の温かい人柄に触れていた。大阪での忙しい毎日とは正反対の、ゆったりとした時間が流れている。

「お仕事で西谷へ?」

「はい。イベント企画の仕事で…」

「イベントですか。面白そうですね」

山田さんの目が輝いた。

「西谷でも何かイベントができるといいんですがね。この美しさを多くの人に知ってもらいたくて」

その時、おばあさんが湯気の立つぜんざいを運んできた。

「はい、どうぞ。体が温まりますよ」

一口すすると、優しい甘さが口いっぱいに広がった。小豆の風味が濃く、心も温まる味だった。

「美味しい!」

「よかった。西谷で採れた黒枝豆を使った甘納豆ですからね」

窓の外の雪景色を眺めながら、美咲は不思議な安らぎを感じていた。

こんな温かい出会いがあるなんて。