イベントレビュー

わがまちのお宝プロジェクト第3回「里山」 〜西谷の森で、炭が生まれる〜

8月11日、山の日。西谷の「宝の森」に、5組の親子が集まりました。

「―西谷で見つける!― わがまちのお宝プロジェクト」の第3回。

(第1回プログラムの様子はこちらから)(第2回プログラムの様子はこちらから)

今回のテーマは「里山」。薪を割り、柴を刈り、炭をつくる。西谷の森が、そのまま教室になる一日です。

台風が近づく直前の一日でしたが、当日は涼しい風が吹き抜けました。
「30度もなかったんじゃないかな」と、案内役の橋本成隆(はしもと なりたか)さんは語ります。

 
 
 
 
 

山の奥に、その森はある

集合は朝9時、東部公民館のそば。
そこから「宝の森」までは、徒歩で15分ほどの道のりです。

 
 
 
 
 

途中、愛宕池(あたごいけ)のほとりで足を止めました。
宝塚市北部振興企画課の職員から、ため池が何のためにあるのかという説明を受けます。

この池の水は、農業用水。
西谷の農地に水を行き渡らせるために、昔からここに蓄えられてきました。

愛宕池のほとりでため池の役割について説明を聞く親子

 
 
 
 
 

池からさらに山を分け入った先に、「宝の森」があります。

敷地は約1.8ヘクタール。
周囲をぐるりと山に囲まれ、外からはその姿が見えません。

宝の森に着いたのは9時半ごろ。
ここから約2時間、体験プログラムが始まります。

木々が日差しをさえぎり、広場には木陰が落ちていました。

木々の木陰が落ちる宝の森の広場に並んだ丸太のアスレチック

 
 
 
 
 

オレンジの重りが、丸太を割る

最初のプログラムは、薪割りです。

ただし、斧は使いません。
使うのは、オレンジ色の重りを持ち上げて落とす、少し変わった道具でした。

重りが落ちると、白いクサビが少しずつ丸太に食い込んでいきます。
一度でパーンと割れるのではなく、何度も落として、じわじわと。

「斧を振り下ろす代わりに、重りを落とす感じですね」

刃物を振り回す必要がないので、子どもでも安全に扱えます。
力任せに叩きつけるわけでもないため、体への負担もほとんどありません。

大人も子どもも、順番に挑戦しました。

薪割りという言葉自体はよく耳にしますが、実際に体験できる機会はなかなかありません。
アンケートで「一番印象に残ったプログラム」に薪割りを挙げたご家族もいました。

 
 
 
 
 

「柴刈り」は、昔の暮らしの言葉

次は柴刈り。炭の材料になる小枝を、森から集めます。

宝の森には、至る所に小枝が落ちています。
風が吹くたび、木から枯れ枝が落ちてくるのだそうです。

「時間がかかると思っていたんですが、予想よりもずっと早く集まりましたね」

「柴刈り」とは、本来もっと手間のかかる仕事でした。

コナラやクヌギといった薪にする太い木以外の、細い木を刈って束ねる。
それが昔の柴刈りです。

今回は落ちている枝を集めてもらいましたが、いつかは桃太郎のおじいさんがやっていた本来の柴刈りも、ぜひ体験してもらいたいですね。

森の中で落ちた枝を拾い集める親子の様子

 
 
 
 
 

燃やし尽くさずに、炭を残す

ほどなくして、器はいっぱいになりました。

炭化器いっぱいに積み上げられた集めたばかりの小枝

 
 
 
 
 

集めた小枝は、「炭化器」と呼ばれる器に入れて燃やします。

すり鉢のような形をした、シンプルな道具です。
けれど、この角度が絶妙なのだといいます。

炎が器の内側に沿って潜り込むように動き、燃え尽きる前に酸素を断つ。
普通に燃やせば灰になってしまうところを、水分だけを飛ばして炭として残すのです。

最初に立ちのぼるのは、水蒸気。
やがて煙に変わり、そのまま温度が上がっていくと、枝が炭になっていきます。

燃やしているのに、燃え尽きない。
目の前で起きているのに、不思議な光景でした。

炭化器の中で小枝が炎を上げ、それを囲んで見守る参加者
炭窯の中の小枝を火ばさみで整える橋本成隆さん

 
 
 
 
 

クッキーの型で、炭が形になる

この日のメインは、炭団(たどん)づくりです。

炭団とは、粉々にした炭を片栗粉やでんぷんで練り固めたもの。
江戸時代から昭和にかけて、家庭の暖房用の燃料として使われていました。

ただ丸めるだけでは面白くない。
そこで、クッキーの型で抜いて遊んでみよう、というのが今回のプログラムです。

担当は、TMTユニコーチングの梶原暢元(かじわら のぶもと)さん。

ブルーシートに座り炭団づくりの説明を聞く子どもたち

 
 
 
 
 

1組につき、粘土状にした炭が1セット。
ボウルに空け、型に詰めて、抜く。

まずは、梶原さんがお手本を見せてくれました。

ブルーシートの上で炭団の型抜きのお手本を見せるスタッフ

 
 
 
 
 

手袋をつけたままだとやりにくいのか、途中で外して、手を真っ黒にしながら素手で挑む子もいました。

ボウルの中の炭を手で押し固める子どもたち

 
 
 
 
 

これが、思いのほか難しい。

指でぐっと押し固めてから抜かないと、崩れてしまいます。
星型のように角のある型は、先っぽが残ってきれいに抜けません。

竹串で押さえながら、そっと抜く。
クッキーの型抜きと同じで、慣れが必要な作業でした。

「炭団を型枠に埋めるのが難しかったけど、最後にコツを掴めて上手に出来ました! 楽しかった〜」

アンケートには、そんな声もありました。

この日、梶原さんは宝塚市の市花であるダリアの形をした炭団も披露してくれました。
こんなにきれいな形の炭ができたら、おしゃれですね。

花びらまで細かく削り出された炭のダリアの作品

 
 
 
 
 

完成した炭団は、そのまま持ち帰り。
消臭剤にも、飾りにも、バーベキューの燃料にもなります。

燃やさない使い道があるというのも、炭の面白いところです。

 
 
 
 
 

5組が持ち帰った、黒い小さな塊

プログラムのアンケートでは、こんな声が集まりました。

「薪割りも楽しかったし、炭団づくりもとても楽しかったです!! 里山の循環を知ることができて良かったです。」

「自然の中で大阪では体験できないことができました。今回下の子(1年生)も熱心に炭団づくりをすることができ良かったと思います。夏休みの宿題としても、いい勉強となりました。」

宝の森の広場に並んだ参加者の集合写真
宝の森の広場で手を振る参加者と地元スタッフの集合写真

 
 
 
 
 


案内人・橋本成隆さんのご紹介

写真パネルを手に里山の話をする橋本成隆さん

 
 
 
 
 

この日、参加者を迎えたのは、NPO法人 新エネルギーをすすめる宝塚の会の橋本成隆(はしもと なりたか)さん。
西谷に移り住んだのは、2023年11月のことです。

宝塚市に住み始めたのは2001年。
そこから西谷にたどり着くまでには、20年以上の助走がありました。

始まりは、約15年前。
宝塚市が募集していた農業ボランティアに参加したことでした。

そこで知り合った方から声をかけられ、西谷の市民農園へ。

以来10年以上、週末になると西谷へ通う日々。
やがて、お子さんも奥様も一緒に来るようになりました。

そうして重ねた時間の先に、今の暮らしがあります。

 
 
 
 
 

橋本さんからのメッセージ

自然にあるものを、ちょっと形を変えて別のものに活用して、また循環させる。

そういうところに興味を持ってもらって、また一緒に宝の森で遊べたら嬉しいな。

薪や炭が日本の主な燃料だったのは、1960年ごろまで。
燃料革命から、まだ60年ほどしか経っていません。

森から出たものが、また森に還っていく。

そんな自然の循環を楽しみながら、自然やエネルギーのことにも興味を持ってもらえたら。
それが、橋本さんの願いです。

 
 
 
 
 

山で過ごした一日の記憶は、その土地への興味に変わっていきます。

大人になったとき、ふと思い出す。
自分の子どもにも同じ体験をさせたくなって、また西谷に戻ってくる。

そんな人の循環も生まれていったら、嬉しいですね。

お宝プロジェクトは、残すところあと2回。
次回は9月27日、テーマは「栗」です。

 
 
 
 
 


森に落ちた一本の枝が、火をくぐって炭になる。
その黒い塊を、子どもの手が握りしめて持ち帰る。
今日また一つ、西谷のお宝が見つかった。

 
 
 
 
 

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