翌朝、ひかるが畑に向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「あああ!チューリップが!」
せっかく育てた花畑が、まるで爆弾でも落ちたかのように荒らされている。土はあちこち掘り返され、花は踏み荒らされ、まさに惨状だった。
「イノシシです」田辺さんが重々しく言った。「昨夜、近所の人が目撃したんです」
住民たちの顔は青ざめている。明日は山田おばあちゃんの誕生日なのに。
「ど、どうしましょう」佐藤さんが震え声で呟く。
その時、なぜかひかるの目が輝いた。
「大丈夫です!私に考えがあります!」
え?と住民たちが振り返る。昨日まで推理で大失敗していたひかるが、なぜか自信満々だった。
「推理小説『山村警部シリーズ』の第十三巻で、似たような事件がありました!犯人を追い詰める時の戦術を応用すれば…」
「ちょっと待って」健太が慌てて手を上げる。「イノシシは犯人じゃないよ」
「分かってます!でも囲い込み戦術は使えるはずです!」
ひかるは興奮して手をパタパタと振り回す。推理小説の知識が実戦で使える!これほど胸躍ることがあるだろうか。
「まず、イノシシの行動パターンを分析して…」
住民たちは顔を見合わせた。また大丈夫だろうか?
でも山田おばあちゃんのために、やるしかない。西谷地区史上最も奇想天外な「イノシシ包囲網作戦」が、今始まろうとしていた。
空には雲雀の鳴き声が響き、まだ誰も気づいていない新たなハプニングの予兆を告げていた。
