あれから三週間。山田おばあちゃんの誕生日がやってきた。
「うわあ…」
畑を見た瞬間、ひかるは息を呑んだ。イノシシに荒らされたはずの場所に、色とりどりのチューリップが風に揺れている。赤、黄色、ピンク、白。まるで虹が地面に降りてきたみたいだった。
「すごいでしょう?」
健太が得意げに胸を張る。
「イノシシが掘り起こした球根、みんなで植え直したんです。バラバラになっちゃったけど、かえってランダムで綺麗になって」
「まさに怪我の功名やな」
田辺さんが笑いながら準備したテーブルにお重を並べる。西谷の山々を背景に、手作りのお祝い会の始まりだった。
「みなさん、ありがとう…」
山田おばあちゃんが涙ぐんでいると、突然がさがさと音がした。
「あっ!」
現れたのは、例のイノシシ親子。ひかるが青ざめた瞬間、おばあちゃんがくすりと笑った。
「あら、あなたたちもお祝いに来てくれたのね」
「お、おばあちゃん…」
「この子たちも西谷の住民よ。一緒にお誕生日会しましょう」
おばあちゃんがサツマイモを差し出すと、イノシシたちはおとなしく離れた場所で食べ始めた。なんとも不思議な光景に、みんなで笑い合う。
桜が舞い散る西谷の空の下、ひかるは思った。推理小説の完璧な解決とは違うけれど、これはこれで素敵な結末だ。
手帳に書き込む。「チューリップ探偵団事件簿・第一話『完』。次の謎を待つ」
