夏祭りの提灯が川沿いに揺れている。光男は測定器を抱えて、そわそわと歩き回っていた。
「光男くん、落ち着きなさいな」
おばあちゃんに声をかけられても、足は止まらない。今夜こそ、本当に蛍が現れるだろうか。台風の後、みんなできれいにした川で、果たして光の舞踏会は開かれるのだろうか。
「あ、あそこ!」
誰かが指差した川辺に、小さな光がふわりと浮かんだ。
「うわあ、本物や!」
光男は測定器を取り落としそうになりながら、川に向かって走った。一匹、また一匹と、蛍が舞い上がる。
「きれいやなあ」
「こんなにたくさん」
祭りに集まった人たちが、息を呑んで見つめている。川面に映る提灯の明かりと、蛍の淡い光が混じり合って、幻想的な世界を作り出していた。
光男は数を数えようとしたが、あまりの美しさに途中で諦めた。何十匹もの蛍が、まるで音楽に合わせるように優雅に舞っている。
「先生、やったな」
肩を叩かれて振り返ると、いつものおじいさんが満面の笑みを浮かべていた。
「皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございました」
光男の声は震えていた。涙が頬を伝う。
「来年はもっとたくさん飛ぶで、きっと」
「そうや、楽しみやなあ」
温かい拍手が響く中、光男は心の中で蛍たちに語りかけた。
君たちを守るために、僕はここにいるんだ。みんなと一緒に。
蛍の光が、まるで答えるように川面でキラキラと踊っていた。
