西谷の日常

「わかった」が育む、西谷の居場所 〜西谷てらこや・坂田晨さん〜

月に一度、平日の夕方。
里ゾー夢の座敷に、子どもたちのざわめきが集まってくる。

宿題を広げる子、友達に問題を教える子、ホワイトボードを囲んで頭をひねる子。
ここは「西谷てらこや」。
地域の大学生3人が、放課後の学びと居場所を子どもたちに届けている。

中心になって活動を続けるのは、西谷で生まれ育った坂田晨さん
てらこやがどんな場所なのか、話を聞いた。

 
 
 

帰ってきたから、見えた景色

坂田さんは西谷で生まれ育ち、中学卒業後は明石高専に進学。
学校が遠方だったため、5年間、地元を離れて過ごした。
去年の春、卒業とともに西谷へ帰ってきた。

「離れてから戻ってくると、見え方が変わるんです」

子どもの頃は当たり前だった里山の風景も、外の世界を知ってから見ると、あらためて特別なものに映った。
地域のために何かできないか——そんな思いを抱き始めていた頃、声をかけてくれたのが地域住民の新林さんだった。

「子どもたちの勉強を見てくれないか」

新林さんからのその一言を受けて、坂田さんはてらこやの活動を始めることにした。

 
 
 

月に一度、大学生3人が西谷に集まる

「西谷てらこや」が始まったのは、去年の4月。
当初は中学生だけが対象だったが、今年4月からは小学5・6年生も加わった。

活動は月1回、平日16時から18時。
山里や里ゾー夢など、西谷の中の施設を会場に開かれている。

運営を担うのは、坂田さんと、小林真奈美さん、前坂琉歌さんの西谷出身の大学生3人。

西谷中学校の生徒はおよそ25〜30人。
そのうち12〜13人がてらこやに顔を出してくれるとのこと。
坂田さんは主に小学生の勉強を見ているという。

窓辺の机で子どもの手元をのぞき込みながら教えるスタッフ

 
 
 

「わかる」が生まれると、学校が楽しくなる

坂田さんが得意なのは数学。
実は坂田さんは、月1回のてらこやとは別に、個人で中学生への学習サポートを週1回のペースで続けている。

「予習を一緒にして、学校の授業を理解しやすいようにサポートしています」

一度習った内容を学校の授業でもう一度聞くと、「あ、この授業わかるぞ」という実感が生まれる。
わかるようになると、勉強や授業そのものが楽しくなり、真剣に向き合えるようになっていくという。

テストの結果も、良ければ達成感に、悪ければ悔しさに変わる。
そのどちらもが、次への頑張りの糧になっていく。

「できるから楽しい、楽しいからやる。そういうポジティブなスパイラルに繋げられたらと思っています」

実際に、週1回のペースで関わる生徒の中には、点数が上がってきた子もいるという。
教室の中で誰かが前向きに勉強に向き合っていると、その姿は周りの子にも伝わっていく。
ひとりの変化が、クラスや西谷全体の雰囲気を少しずつ変えていくのかもしれない。

 
 
 

勉強だけじゃない、安心できる居場所

月1回のてらこやだけでは、週1回の個別指導のように学力を大きく伸ばすことは難しい。
それでも坂田さんは、てらこやの意味を違うところに見出している。

「勉強を教えるというより、悩みを相談できる、安心できる場所にしたいんです。サードプレイスというか」

親にも先生にも話しにくいことを、てらこやでぽろっと話してくれることがある。
学校で会った子どもたちが「てらこやの話」で盛り上がったり、坂田さんの物真似をして笑い合ったりすることもあるそうだ。

「そこで会話が生まれるのが嬉しいですね」

学年を超えて顔見知りになれるのも、人数の少ない西谷ならでは。
小学生と中学生が、まるで兄弟のように笑い合っている。

ホワイトボードに書かれた図形問題をみんなで囲んで考える様子

 
 
 

教える側にも、気づきがある

てらこやは、子どもたちだけの場所ではない。
関わる大学生たちにとっても、大切な時間になっている。

「親にも先生にも相談できないことを話してもらえるのが、まず嬉しいです。親御さんから感謝されることも多くて」

誰かの役に立てているという実感そのものが、坂田さん自身にとっても貴重な経験になっているという。

小林さんは、もともと教員を目指していた。
けれど子どもたちと接するなかで、少し違う道も見えてきたという。

彼女は、教える立場になり、自分を再発見し、今は教員以外の道も模索しているようです。

子どもの成長を見守れること、誰かの「できた」を一緒に喜べる時間は、教える側にとっても財産だ。

 
 
 


これからのてらこや、これからの西谷

坂田さんが大学を卒業したあとも、この活動が続いていけるかどうかは、まだ分からない。

「一番いいのは、僕が教えた子たちが、次は下の子に教えていくこと。難しいですけどね」

現在の運営は補助金でまかなわれているが、寄付などがあれば、もっと活動しやすくなる場面もあるという。

「寄付があれば教材を揃えられますし、もう少し定期的に開催できると思います」

西谷への移住を考える家族にとっても、「学びの環境が整っている」ことは大きな安心材料になるはずだ。
てらこやをこれからどんな形にしていくか、坂田さんたちは今も考え続けている。

 
 
 

てらこやという小さな取り組みが、西谷の子どもたちに「わかった」という自信と、安心できる居場所を届けている。

そんな西谷の「今」を、地域のみなさんに直接届ける場として、西谷フォーラム&フェア 2026 〜西谷の魅力と学び〜が開催されます。
パネルディスカッションには、このてらこやの活動を支えている大学生の坂田さん、小林さん、前坂さんも登壇します。
てらこやに込めた思いを、ぜひ直接聞きに来てください。

  • 日時:2026年10月3日(土)10:00〜16:00
  • 場所:西谷会館(兵庫県宝塚市大原野炭屋1-1)
  • 入場無料・予約不要

西谷フォーラム&フェア 2026 詳細はこちら

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