黒い火よ、燃えろ 〜西谷の森が子どもたちに遺したもの〜 #24-2

西谷小学校の最後の夏は、どこか祭りの残り香がした。

廃校記念の「里山炭焼き体験」は、波豆川沿いの空き地にテントを張り、三十人ほどの子どもたちと保護者が集まっていた。煌太は前日の偵察で顔を売っておいた地元のNPOスタッフに声をかけ、半ば強引にボランティアとして加わっていた。

炭焼きの煙が白く揺れる午前中は、何事もなく過ぎた。

問題は昼過ぎに起きた。

「あれ……三人、いない」

若い女性スタッフの声が、じわりと場の空気を変えた。タカシ、ユウナ、コウキ。いずれも小学三年生。トイレにも、川辺にもいない。

大人たちの顔が青くなるのを、煌太は見ていた。

「迷子になったんだ」「熱中症じゃないか」「警察に——」

声が重なり、混乱が膨らんでいく。

煌太は黙って雑木林の縁まで歩き、地面を見た。草が、一方向に向かって踏み倒されていた。三人分の足跡。しかも、走った跡だ。

「あの子たちは逃げたんじゃない」

煌太は振り返り、はっきりと言った。

「何かを追いかけたんだ」

誰も答えなかった。

煌太は林の中へ踏み込んだ。コナラとアベマキが混じる雑木林は、昼なお薄暗く、草いきれが喉に絡む。数十メートル入ったところで、煌太は立ち止まった。

遠くで、子どもの笑い声がした。

そして、白い煙が——あの窯から立ち上るものと同じ、細く真っすぐな煙が——木々の奥から昇っているのが見えた。

煌太の胸の中で、何かが燃え上がった。

走れ、と、父の声が言った気がした。