西谷会館の、遊戯室と集会室。
平日の午前には、赤ちゃんを抱いた保護者が集まってくる。
放課後や休みの日には、卓球台の音とボールを追いかける声が響く。
ここが、西谷児童館。
開設のときからここにいる館長・二井由紀美さんに、話を聞いた。
西谷児童館とは
西谷児童館があるのは、2005年に開設された複合施設・西谷ふれあい夢プラザ。
運営しているのは、地域の人たちが立ち上げたNPO宝塚NISITANIだ。
0歳から18歳まで、誰でも無料で
対象は0歳から18歳未満。
市内に住んでいるか、学校・園に通っている子どもなら、誰でも無料で利用できる。
小学校に上がる前は、保護者と一緒に。
1年生になれば、子どもだけで遊びに来ていい。
「預かる施設」ではない
学校や幼稚園、保育園との一番の違いを、二井さんはこう言った。
「児童館は、預かる施設じゃないんです」
学校も幼稚園も保育園も、そこに自分の席があって、毎日通う場所。
「でも児童館はそういう施設ではなくて、あくまで本人が行きたいか行きたくないか。行きたかったら行ったらいいし、行きたくなかったら行かなくていい」
行きたい時に、行きたい人が行く。それが児童館だ。
赤ちゃんから、大人になるまで
二井さんが「一番おもしろい」と言うのが、対象年齢の幅の広さだ。
「0歳から18歳までの子どもが対象なんで、長いスパンで一緒にいられるんです」
幼稚園なら6歳まで。小学校なら6年間。中学校なら3年間。
先生も、異動などがあればそこで子どもたちとの距離が離れてしまう。
けれど児童館の職員は、ずっと同じ場所にいる。
赤ちゃんの頃から18歳になるまで、その子の成長をそばで見守っていける。

宝塚に10か所。それでも、西谷まで来る人がいる
宝塚市は、7つのコミュニティブロックごとに地域児童館を置いている。
「子ども館」なども合わせると、市内には全部で10か所。
その中で、西谷児童館だけが少し違う。
日曜日に開いている、市内で唯一の児童館
ほかの館が月曜から土曜で日曜が休館なのに対して、西谷児童館は火曜から日曜。
休館日は月曜日だ。
つまり、大型児童センターを除いては、日曜日に開いている児童館は、宝塚市内でここだけになる。
車で行けて、のびのび遊べる
「各エリアに児童館があるんだけど、駐車場が充実してる児童館はあまりない」
市内には駐車場を持たない館も少なくない。
西谷なら車で行けて、外には芝生広場もある。
「土日は南部の方が8割です。1日に60人から70人くらい来はりますね」
市の北端にある児童館に、市街地から車を走らせて。
休みの日の西谷児童館は、そういう場所になっている。
口コミで、広がっている
混み合った日に、近くの子ども館の職員さんが「西谷に行っておいで」と案内してくれることもあるという。
車で15分ほどの距離だ。
「あそこ良かったよ、次行ってみたら、って教えてもらって来ました、とか。口コミが多いですね」
西谷児童館は、宝塚じゅうの子育て家庭に利用されている。
そのことは、西谷の中では意外と知られていない。

西谷の児童館にしか、できないこと
「西谷は南部と違って、地域性がものすごく強いところでしょ。だから自然の中で遊んでるっていう意味では、よその児童館ではできひんようなことをやりたいなと思うんです」
夏は、流しそうめん。
流し台は、男性スタッフが竹を切り出して組み上げた手作りだ。
秋は、ドラム缶の窯でピザを焼く。
生地から自分で作って、焼き上がりを熱いうちに頬張る。
冬は、芝生広場で凧揚げ。
思いきり走ったあとには、同じ窯で焼き上げた焼き芋が待っている。
年末のお正月飾りは、南天も松も竹も、すべて西谷産。
かしわもちには西谷産のもち米と柏の葉、秋のクラフトには拾ってきたどんぐり。
「自然の素材を使える体験は、やっぱり大事にしてるんですよ」
都市部の児童館ではまず難しいことが、ここでは普段の活動の中にある。
西谷の四季は、児童館の行事のなかにある。
けれど二井さんの話の中心にあったのは、こうした行事のことではなかった。
先生よりも、長い付き合い
二井さんは、2005年の開設のときから西谷児童館にいる。
始まりは、意外なものだった。
「自分自身が、児童館って何、みたいな。児童館、知らんかったからね」
保育園と幼稚園で、あわせて6年間、先生をしていた。
その後は自分の子育てに専念し、手が離れた頃、もう一度子どもたちのそばへ戻ってきた。
それが、西谷児童館だった。
ここで働きはじめて、今年で21年目になる。
最初から今のような立ち位置だったわけではない。
学校の先生と本当に話ができるようになるまでには、10年以上かかったという。
たくさんのお母さんやお父さんの話を聞き、少しでも子育てが楽しくなるようにと手を尽くしてきた。
先生には言わないことを、子どもたちが二井さんたちには話してくれることもあった。
その積み重ねを、先生たちが見ていた。
「行ったり来たりしながら、信頼関係というか、それぞれをちゃんと認め合える仲になったかなって、今は」
西谷は、幼稚園も小学校も中学校もひとつずつ。
だから児童館は、そのすべてとつながることができる。
「先生たちよりも、私たちの方がお付き合いは長いと思うのね」
親御さんのことも、おじいちゃんおばあちゃんのことも知っている。
だから時には、学校の先生の方から相談が来ることもある。
こうした関わりのために、職員は今も学び続けている。
児童厚生員の研修、発達障害についての学び、子育て相談のノウハウ。
「我々も、ただ遊んでるだけに見えるかもしれないけど、いっぱい勉強しているんです。見えないところでね」
遊びに来ている子どもたちからは見えないところで、児童館は地域とつながり続けている。

「あの時、行ける場所があってよかった」
二井さんが、少し声のトーンを変えて語ったことがある。
学校に行くのがしんどくなってしまう子は、どこにでもいる。
「学校には行かないんやけど、児童館には来る、っていう例がすごく多いんです」
自分の住むエリアの児童館なら、知っている人に会ってしまう。
少し遠いけど西谷でなら、気兼ねなく、ゆっくり過ごせる。
子どもが来て、お母さんも来て。
職員と話して、少し元気になって帰っていく。
そしてまた来たくなったら、遊びに来る。
「そういうのを繰り返してらっしゃった方が、今までにたくさんいてはるんですよ」
開設から21年。
当時小学生だった子どもたちは、もう30歳前後になっている。
その子たちが、ある日ふらっと児童館を訪ねてくるのだという。
「僕は子どもの時にここにこうやって来て、こうやってしてもらったことが、やっぱりありがたかった」
お母さんたちも来る。
ここで話を聴いてもらい、泣かせてもらえたことがありがたかった、そういう場所がほかになかったから、と。
卒業してから何年も経って、それでも足が向く場所。
帰省した時に顔を出してくれたり、お父さん、お母さんになって子どもを連れて遊びに来てくれたり。
「そんな時は、嬉しいね」
二井さんが大事にしているのは、この一点に尽きる。
「あの時、行ける場所があってよかったなって思ってもらえたら」
「子どもたちが大人になった時にね。小さい時よく行ってたなって、あの時面白かったなって、ちょっと思い出してもらえたらうれしい」
「子どもの時、あそこが居場所だったよって思ってもらえたら、私たちはそれが正解」
西谷の子どもの数は、年々少なくなってきている。
それでも、地元の子どもたちにこそ、また気軽に遊びに来てほしい。
二井さんはそう願っている。

平日は、ゆっくり過ごせます
土日の西谷児童館は、たくさんの家族でにぎわっている。
その一方で、平日にはゆったりとした時間が流れている。
広い部屋をひとり占めするみたいに遊べて、赤ちゃんを連れていても気を遣わなくていい。
なかよし広場、季節の工作。
平日の午前には、小さな子と保護者のための時間が用意されている。
卓球台がある。大型ブロックも、ボールプールも、将棋も、本もある。
西谷会館のホールが空いている時は、子どもたちに開放してくれる。
中高生は、夜9時まで過ごせる。
予約もいらない。お金もいらない。
いつ行っても、職員が迎えてくれる。
「遊びに来るところやから。どんなとこなんかな、子どもらが遊べるようなとこなんかなっていうので、フラっと来てくれたら」
ドライブがてら、西谷まで足をのばして。
西谷の森公園や自然の家に寄って、その帰りに立ち寄るくらいの気持ちで。

21年かけて地域とつながり続けてきた場所、
西谷児童館。
そんな西谷の「今」を、地域のみなさんに直接届ける場として、西谷フォーラム&フェア 2026 〜西谷の魅力と学び〜が開催されます。
パネルディスカッションには、西谷児童館 館長の二井由紀美さんも登壇します。
児童館という場所に込めた思いを、ぜひ直接聞きに来てください。
- 日時:2026年10月3日(土)10:00〜16:00
- 場所:西谷会館(兵庫県宝塚市大原野炭屋1-1)
- 入場無料・予約不要








