黒い火よ、燃えろ 〜西谷の森が子どもたちに遺したもの〜 #24-7

窯が、口を開けた。

夜明けの光の中、煌太は息を止めた。まるで地の底から引き抜かれた黒い宝石のように、炭が並んでいた。艶やかに、静かに、吸い込まれるような黒さで。

焼けた土の匂い。波豆川の瀬音。鳥の声が一つ、山の奥で鳴いた。

煌太は一本手に取った。ずしりと重い。その重さが、三日間の火の重さだと思った。

「ハナ」

少女が顔を上げた。目の下に泥の跡が残っていた。

「これがお前たちの西谷の夏だ」

煌太は炭をハナの手に置いた。「炭になっても、熱は消えない。この夏も——消えない」

ハナは何も言わなかった。ただ両手で炭を包み、ぎゅっと胸に押し当てた。リョウが鼻をすすった。ツバサが空を見上げた。誰も笑っていないのに、全員の顔が輝いて見えた。

吉田翁が近づいてきた。しわだらけの手の中に、古い鍵が一つ光っていた。

「煌太さん」

翁の目が、濡れていた。「来年も来い。この子らに、火を継がせてくれ」

煌太は鍵を受け取った。冷たくて、重かった。逃げた男に、これほどの重さを渡していいのか。そう思った瞬間、リョウが叫んだ。

「来年も来るんでしょう! 来なかったら——絶対に許さないからな!」

泣き声まじりの怒号だった。煌太は笑った。腹の底から、火が湧くように笑った。

「ああ。来る」

篠山街道を下りながら、煌太は波豆川の光を見た。水面が白く砕けて、夏の朝をはじいていた。

胸の中に、黒い炭が一本、まだ熱を持っていた。

教壇に、もう一度立つ。

その決意は、炭のように——静かに、深く、燃えていた。