チューリップ探偵団 〜西谷に舞い散る謎と笑顔〜 #5-1

田中ひかるが西谷地区の公民館に足を踏み入れた時、窓口で声を荒げている老婦人がいた。

「だから警察には言いたくないの!でも許せないのよ、あの球根は亡くなった夫との思い出が詰まってるの!」

「山田さん、お気持ちは分かりますが…」困り果てた職員の声が響く。

ひかるは反射的にメモ帳を取り出した。推理小説を読み過ぎて、こういう場面に遭遇すると血が騒ぐのは職業病ならぬ趣味病だ。

「あの、何かお困りですか」

振り返った山田さんは、80歳は超えているだろう小柄な女性だった。目には涙が浮かんでいる。

「あなたは?」

「田中ひかると申します。本日からこちらで地域振興を担当させていただきます」

「地域振興?」山田さんの目がぱっと明るくなった。「それじゃあ、地域の問題も解決してくれるのね!」

「え、それは…」

規則では警察案件は管轄外だが、山田さんの期待に満ちた視線を受けて、ひかるの心は揺れた。

「実は昨日の朝、大切にしていたチューリップの球根が全部なくなってたの。50個も!」

「50個も?」

「ええ。春になったら西谷の里山をチューリップでいっぱいにしようと思って…でも今朝見に行ったら、掘った跡まできれいに消されてて」

ひかるの推理好きの血が完全に沸騰した。証拠隠滅まで図られている。これは単純な盗難じゃない。

「分かりました。私が必ず真相を突き止めます!」

気がつけば、そう宣言していた。