田村さんの声は、低くてゆっくりしていた。
「窯の中で、木は蒸し焼きになる。燃えるんやなくて、蒸される。そこが大事なとこや」
西谷の森公園の炭焼き小屋は、山の斜面にへばりつくように建っていた。石積みの窯は思ったより大きくて、人が一人すっぽり入れそうだった。拓海はその暗い口をじっと見た。
薪割り台に案内されると、康太がもう隣に立っていた。
お互い、何も言わなかった。
田村さんが斧の持ち方を教えてくれた。康太はうなずいて、さっさと薪を立てた。迷いがなかった。斧を振り上げて、まっすぐに落とす。パン、という音がして、木がきれいに割れた。
拓海は自分の薪を見た。どこで打てばいいかわからない。
「節、避けたほうがええ」
康太が言った。それだけだった。
「来たことあるん?」
拓海は聞いてみた。
「三回目」
「なんで」
康太は少し間を置いた。
「なんとなく」
理由を言う気はないらしかった。拓海もそれ以上は聞かなかった。なんとなく、というのは、なんとなくじゃないときもある。それくらいはわかった。
午後になって、窯に火が入った。
田村さんが細い枝に火をつけると、すぐに炎が大きくなった。ぱちぱちと音を立てて、煙が上に流れていく。
二人は並んで、黙って見ていた。
西谷の山は緑が濃かった。煙がゆっくり登っていって、その緑の中に消えていく。どこかで鳥が鳴いた。
「炭って、なんで黒いんやろな」
康太がぽつりと言った。
「さあ」と拓海は答えた。
「燃え残りやからかな」
康太は炎を見たまま言った。拓海も炎を見た。
燃え残り。
その言葉が、胸のどこかに静かに引っかかった。
