炭になった夏 〜西谷の森で、ぼくらは燃えた〜 #23-2

田村さんの声は、低くてゆっくりしていた。

「窯の中で、木は蒸し焼きになる。燃えるんやなくて、蒸される。そこが大事なとこや」

西谷の森公園の炭焼き小屋は、山の斜面にへばりつくように建っていた。石積みの窯は思ったより大きくて、人が一人すっぽり入れそうだった。拓海はその暗い口をじっと見た。

薪割り台に案内されると、康太がもう隣に立っていた。

お互い、何も言わなかった。

田村さんが斧の持ち方を教えてくれた。康太はうなずいて、さっさと薪を立てた。迷いがなかった。斧を振り上げて、まっすぐに落とす。パン、という音がして、木がきれいに割れた。

拓海は自分の薪を見た。どこで打てばいいかわからない。

「節、避けたほうがええ」

康太が言った。それだけだった。

「来たことあるん?」

拓海は聞いてみた。

「三回目」

「なんで」

康太は少し間を置いた。

「なんとなく」

理由を言う気はないらしかった。拓海もそれ以上は聞かなかった。なんとなく、というのは、なんとなくじゃないときもある。それくらいはわかった。

午後になって、窯に火が入った。

田村さんが細い枝に火をつけると、すぐに炎が大きくなった。ぱちぱちと音を立てて、煙が上に流れていく。

二人は並んで、黙って見ていた。

西谷の山は緑が濃かった。煙がゆっくり登っていって、その緑の中に消えていく。どこかで鳥が鳴いた。

「炭って、なんで黒いんやろな」

康太がぽつりと言った。

「さあ」と拓海は答えた。

「燃え残りやからかな」

康太は炎を見たまま言った。拓海も炎を見た。

燃え残り。

その言葉が、胸のどこかに静かに引っかかった。