炭になった夏 〜西谷の森で、ぼくらは燃えた〜 #23-3

田村さんが「ちょっと川へ行こか」と言ったのは、窯の火が落ち着いてからだった。

炭になるまで数時間かかる。それまでは待つだけだという。

波豆川は、森公園からすぐのところにあった。木の間から光が差して、水面がきらきらしていた。

「入ってみ」

田村さんに言われて、拓海は靴と靴下を脱いだ。おそるおそる一歩踏み込んだ瞬間、声が出た。

「つめた!」

康太が隣でぷっと笑った。

水は透き通っていた。底の石が、ゆがんで見える。足首のあたりまで浸かると、冷たさがじわじわと体の中に入ってきた。気持ちよかった。さっきまで火を見ていたせいか、なおさら気持ちよかった。

康太が川岸で石を拾い始めた。平べったいやつを選んで、川面に向かって横に投げる。石が三回、四回と跳ねた。

「水切りや」

拓海も石を拾って投げた。すぐ沈んだ。もう一回投げた。また沈んだ。

「手首や。肘じゃなくて」

康太が言った。また、それだけだった。

三度目、石を持った右手首をスナップさせた。石が水面を弾いた。二回。三回。

「跳んだ!」

思わず声が出た。康太が「おっ」と言って、少し顔をほころばせた。

二人で笑った。声を合わせて笑ったのは、これが初めてだった。

川の向こうに棚田が見えた。稲の緑が、西谷の山の緑と溶け合うようにつながっている。

空が橙色に傾きはじめていた。

波豆川のせせらぎが、ずっと同じ音で流れていた。何も言わなくても、それだけでよかった。こういう時間があることを、拓海は今日まで知らなかった。